RAPにできないラッパーの本音 by ゆうま

MCバトル練習会ゆうまーるBP主催者&参加者募集中/東大の大学院生/YouTuber1年生/演劇とRAP/世界最大エビフライ食べたい/twitter @yuma_k_0712

服屋の店員さん、私に声をかけないで

池袋のサンシャイン通りの前を上下スウェットで缶ビールを飲みながら徘徊するワタシ、

しかも、さらに小声でブツブツと韻を踏みながら満足そうにニヤニヤし、夢遊病のようにフラフラと歩いてる職務質問対象者の奇怪なワタシ、

すなわち、明らかに、一見ファッションには無頓着なワタシであるが、

こんなワタシでもTPO(ティンポではないyo)ってものぐらいわきまえてる。

だから、ワタシのことを、非常識な不審者などとカンチガイしないでいただきたい。

例えばワタシは、

結婚式に行って「おめでとうございます」

お葬式に行けば「ご愁傷様でした」

という挨拶ぐらいは知っておるし、

まさか

結婚式に行って「ご愁傷様でした」

お葬式に行って「おめでとうございます」

などと言うような海賊王ではないのだ。

しかもワタシは、コンビニで買い物をするたびに、

店員サンに事務的に「ありがとうございました」と言われる前に笑顔で

「どうも〜♩」

という奴だし、

電車では十中八九、お年寄りに席を譲るし、

しょっちゅう街中で道を聞かれては丁寧に案内するし、

毎日毎日あちこちに募金するし、

排泄の際はきちんとトイレに行くし、

まあ、そんな自分の人柄の良さ、

すなわちワタシの道徳的行為者っぷりをワザワザfacebookでアピールするような認められたがりだ。

回りくどい言い方をしたが、

何が言いたいかといえば、

こんなワタシだって洋服屋さんに洋服を買いに行くことだってあるのだ、

ワタシが洋服屋で試着をしてる姿を見たからといって、

驚くこたぁない。。

そう、ある日のこと。

JR池袋駅の駅ビルのたくさんの服屋さんが入った4階。

「ご覧くださぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃ」

という、甲高い女性店員の声が響く。

言われなくても勝手にご覧になります、

と突っ込みたくなるのはワタシだけではないだろうが、

店員さんからすると、「ご覧くださぁぁぁぁぁいぃぃぃ」は、

「ねぇ、見てみてワタシ、ワタシを見て!今、働いてるのよ、大きな声を出してやる気マンマンでお客様にお店の存在をアピールしてるのよ!一生懸命なのよ!サボってないのよ!売り上げが悪くても、ワタシは悪くないのよ!」

という心の声の裏返しだと思われるので、

黙ってることにする。

そんな声がこだまするなか、

ワタシは洋服屋に入ると、すぐに、

店員さんにマークされているのを感じる。

みつめられてる、見つめられているぞぉぉぉ...。

ワタシが目の前にあるコートに手をのばしたわずか0.2秒、その瞬間だ!!!

すかさず店員さんがこちらに瞬間移動してくる!

店員A「こちらの商品、サイズはS M L がございます。」!

そんなの知ってるyo!

サイズにSMLがあるなんて、

常識だyo?

バカにせんでくれたまえ、ワシだってマクドナルドに行ったことぐらいあるのじゃ!!

自分の名前を漢字で書けるようになる前から、

ポテトにSMLがあることぐらい知っておる。

それとも、この店にはSML以外にサイズがあるというのか!?

まあ、仮にXLやXXLがあったとしても、

身長157cmのワタシにワザワザ言うことではないぢゃろう?

それともこの店には、

洋服のサイズを表す単位として、PとかQとかπ(パイ)とかΣ(シグマ)とかがあるのか??

それとももはや店員の常識としては、アルファベットじゃなくて、

洋服のサイズをSMLの代わりに、「パピ・プペ・ポ」や「きゃ・きゅ・きょ」で表すようなことがあるのだろうか!?

いや、

もしかして洋服のサイズを”動物の名前”で表したりするのか?例えば、

「アリ」(S)
「ハエ」(M)
「ゴリラ」(L)
「インドゾウ」(XL)
デスピサロ」(特注)

店員「お客様ぐらいの背の高さでいらっしゃいますと、”ハエまたはゴリラ”がぴったりだと思いますぅぅぅ」

といった具合に...。

いや、植物かもしれぬ。

「コケ」(S)
「イネ」(M)
「サトウキビ」(L)
「マツ」(XL)
「マツタカコ」(特注)

店員「お客様は細身でいらっしゃいますから、”コケ”で十分かと存じます」

いや、野菜かもしれぬ。

「エノキ」S
「シメジ」M
「シイタケ」L
「マツタケ」XL
「マツタケコ」特注

店員「ふだんは、”シイタケ”を身につけられていらっしゃいますか?」

いや、人名かもしれぬ

小野妹子」S
「金太郎」M
「花太郎」L
「スタミナ太郎」XL
ウルトラマン太郎」特注

店員「お客様でしたら、”花太郎”がぴったりでいらっしゃいます。」

ああ。

このように考えてみれば考えてみるほど、

世の中にはまだまだ未知なことが沢山あるのだと気付かされる。

ワタシは、恥ずかしいほどに、

何も知らないのだ、と気づかされる。

無知の知」すなわち、

「知らないということを知る」by ソクラテス

おお。

これでよくわかった、これでようやくツナガッた...

店員さんのいう

「ご覧くださぁぁぁぁあぁいぃ」というセリフは、

別に洋服を見てくれと言っているのではない。

この広すぎる世の中を

われわれの知らない現実を、

きちんと見なさいという

ソクラテスの教えを受け継いでおり、

あるいは釈迦の説法や

もしくは寺の坊主のお経を、

誰にでもわかりやすいシンプルな言葉に翻訳したものであろう。

圧巻である。

わかりにくい哲学的議論を

アホにでもわかりやすくこんなに簡単な言葉に嚙み砕き、

大声で大衆に訴えかけるとは、

まさに教育者のカガミ。

そうか。

受けて立とう。

ワタシも、この店員さんに学び、

広い視野を持ち、

世界をより広く捉えたいと思う。

そうすると、

目の前に売られている洋服全てを見回し

いや、さらに広く、

この駅ビルに売られている洋服全てを見回し、

いや、

さらに拡大し、

日本中に売られている洋服を見渡そう!

いやいや、

さらにさらにワールドワイドに見渡そう!

洋服のみならず、

和服、

ウエディングドレス、

チャイナドレス

和式の結婚式で頭にのっける謎の”白い箱”、

平安時代の女性が羽織っていた十二単

民族衣装、

青銅のヨロイ、

古代ギリシャ人が肌に身につけていた”布切れ”、

北京原人が下半身の一部を隠すために用いていた”葉っぱ1枚”

これらを考慮すれば、

この服屋さんは...

ああ

なんと品揃えの悪い店である!

店員さんの言う通り、

全世界を

「ご覧に」なった今、

しまいには、

この店員さんが声をかけてきた際には、

ワタシの方から質問する。

店員さん「お客様、何かお探しでしょうか?」

ワタシ「ワタシのホウレンソウはどこぢゃ?」

こうしてワタシは、

駅ビルの4階を去り、

地下1階の食品コーナーへと足をのばすのであった。

P.S.
この写真が本文の内容と関係している必要があるのだろうか?

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facebook投稿(2016.3.6)より転載。